「まえがき」より
タイ語は聞き取りが苦手!という声をよく耳にします。
「得意・不得意」は主観的なものとはいえ、やはり優しく陽気なタイ人ともっと話したい、否もっと相手のことを知りたいというのがタイ語学習者の本心だと思います。冒頭の「聞き取りは苦手」は「相手の気持ちを理解したい」と言い換えた方がいいでしょう。
タイ語は言語の性格上、わりと早い時期から話せるようになり、質問や感想・意見を相手に伝えることができます。そして相手からの返答も大体想像でき、「会話(発話・聞き取り)は簡単だ!」と感じると思います。ですが、それはあなたから相手に話しかけた場合です。前後の状況や経緯も分からないまま見知らぬ人から話しかけられたらどうでしょうか… おそらく困惑することが予想されます。ここに、一般の会話とは違ったリスニング独自の学習が必要になるのです。
では、リスニングはどのように学べばいいのでしょうか? 私見ですが、部屋の中でひとりじっくりとタイ語を聞き、自身の聞き取り方を見直す(分析する)ことをお勧めします。「そんなことしないで(タイで)タイ人と会話をした方が絶対に早く聞き取れるようになる」とはやる気持ちを抑えましょう。
本書は大意を把握し、細部の情報収集に踏み込むことで、話しかけられたときの心構えを身につけるよう構成しています。そしてもうひとつ、本文には直接記載していませんが、各課にはあなたの潜在意識にアクセスし聞き取り能力を強化する種をたくさん蒔いておきました。本書を繰り返し読み返すことで「誰もが真似できないあなたのオリジナル聞き取り術」が無意識に身につきはじめるはずです。スピーキング練習と違い、リスニング学習に即効性はなく地味な作業になるかもしれませんが、ある日突然「こんなに聞き取れるようなった」と驚くあなたの姿が目に浮かんできます。一度身についた聞き取り術はそう簡単に色褪せないでしょう。
近年、各種団体が国家レベルでタイと積極的に交流しています。それとは別に日本人と関わる機会がない市井の人々ともぜひ語り合っていただければと個人的に思っています。現地には、あなたに社交辞令ではなく本音で話したいタイ人がたくさん待っています。旅先や滞在先で縁あって知り合ったタイ人のよき話し相手、よき相談相手になってください。そんな願いも込めて本書を作りました。