三修社 SANSHUSHA

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日蝕

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日蝕

著者名
アーサー・ケストラー 著 / 岩崎克己
判型
四六判/上製
ページ数
312ページ
ISBN
978-4-384-06027-0 C0097
初版年月日
2023/05/20
定価
3,080円 (本体 2,800円+税)
ジャンル
文芸 > 文学

ジョージ・オーウェルが「傑出した小説」と絶賛。
『真昼の暗黒』の、75年ぶりに発見されたドイツ語原本からの初邦訳。

かつて革命の英雄であった主人公ルバショウは、絶対的な権力者「ナンバー・ワン」による粛清の標的にされ、でっち上げられた容疑で逮捕・投獄される。隣の独房の囚人と壁を叩いた音によって会話し、これまでの半生を追想するうちに、革命家としての自分の行動の正当性に対する確信が揺らぎ始める。取り調べを受ける中でルバショウは、犯してもいないグロテスクな罪を自白していく。


アンチ・ユートピア小説であり、ザミャーチンの『われら』、ハクスレーの『うるわしき新世界』、オーウェルの『一九八四年』、そしてブラッドベリの『華氏四五一度』と比較し得る。残念なことに、これらはいずれも、今日に至るまでその現実性を少しも失っていない二十世紀からの警告の声である。(ドイツ語版序文、マイケル・スキャメル)


スターリン専制下のソビエト連邦で一九三〇年代後半に行われたモスクワ裁判の犠牲者をモデルとした政治小説である。それと同時に、ドストエフスキーの『罪と罰』や『悪霊』や『カラマーゾフの兄弟』の系譜を受け継ぎ、政治と倫理の問題をめぐる議論の交わされる観念小説でもある。さらには、全体主義的な体制下の監獄で、一人で戦わねばならなかった孤独な人間の心の動きを丹念に追ったサスペンスタッチの心理小説でもある。(「訳者あとがき」より)


描かれた時代背景や、著者アーサー・ケストラーについて、そしてドイツ語原本からの初邦訳に至るまでの変遷とこれまでの邦訳との違い、本書の評価や魅力について、岩崎克己氏による訳者あとがきを公開しています。

訳者あとがき

読者レビュー

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著者紹介

アーサー・ ケストラー(アーサー・ ケストラー)
1905年ブダペストに生まれ、1919年以降ウィーンで育ったドイツ系ユダヤ人作家。1983年ロンドンで自死。1931年に共産党に入党しソビエト各地を旅行。パレスチナ、パリ、ベルリンでジャーナリストとして活動。1936年に英字紙の特派員として内戦中のスペインに派遣。翌年、右派フランコ軍によって投獄されるも、イギリス政府の働きかけで釈放。1938年に共産党を離党後、「モスクワ裁判」の被告たちをモデルとした本作『日蝕』を1940年にパリで書きあげ、ドイツ軍のパリ侵攻から逃れてロンドンに亡命。逃避行中の混乱のなかで原作は失われ、英語への翻訳版だけが残る。戦後『真昼の暗黒』という題で何度かその英語版からの重訳が出たが、2015年に75年ぶりにドイツ語原作原稿が発見される。初期の作品:『スペインの遺書(Ein spanisches Testament 1937)』、『奴隷戦争(Der Sklavenkrieg 1939)』、『日蝕(Sonnenfinsternis 1940)』(ドイツ語で執筆)、『出発と到着(Arrival and Departure 1943)』、『夜の泥棒(Thieves in the Night 1946)』(英語で執筆)など。
岩崎 克己(イワサキ カツミ)
1959年生まれ。金沢大学文学研究科修士課程修了。福井大学教育学部助教授を経て、現在広島大学外国語教育研究センター教授(博士)。主な研究領域は、ドイツ語教育、ドイツ文化事情。著作:『日本のドイツ語教育とCALL -その多様性と可能性-』(三修社 2010)、Wortschatztest zu 100 Grundverben an einer Universität in Japan(Neue Beiträge zur Germanistik Nr. 159 2020)など。