<はじめに>
2016年秋からウェブサイト「デアディダスderdiedas」に掲載された同名のドイツ語ミニ講座に大幅な加筆を行ったもので、ドイツ語圏の人々がしばしば用いる慣用表現を、生きたドイツ語会話を通じて親しみやすいかたちで学ぶことを目標としています。ある程度ドイツ語を勉強してきた中級学習者が、教室で習う基本ドイツ語の領域から一歩踏み出して、日常の場での言語の運用能力をいっそう高めるために、きっと役に立つと思います。慣用句やことわざなどがさりげなく使えれば、言語表現がより豊かに、よりポイントを突いたものになることは、私たちも母語を身につけていく過程で経験ずみですよね。
この本の特徴の一つは、共著者のマーティン・フリッツさんが前書きで述べているように、ティムとヤンが演じる楽しく魅力的なディアローグです。書かれた文字を目で追うだけではわからないような、ネーティブ・スピーカーのドイツ語表現のナマのニュアンス、ジェスチャーや表情を、居ながらにしてリアルに体験できるのは大きなメリットと言えましょう。
本書は1ページで1つの慣用句を紹介する構成になっています。各ページの下にあるQRコードを読み込むと、ティムとヤンが演じるYouTubeの動画を閲覧できます。まずはティムが各ページのいちばん上にある表現をゆっくりと2回くりかえし、それからその表現を用いたティムとヤンの会話になります。日本語の意味は対訳を参照してください。ページ中央にもう一度その慣用句と日本語の直訳を書きました。ここでは当該の慣用句が実際に使用される際のバリエーションも考慮し、人称代名詞や別の動詞を使用する可能性なども必要に応じて併記しました。その下が慣用句の意味と解説です。
ティムとヤンの会話はかなりの速度ですから、聞き取りの練習にもなるでしょう。二人の迫真の演技は、テキストの行間に潜む意味やニュアンスの理解に役立ちますし、シンガーのティムが歌を披露してくれたり、思わずクスッと笑いたくなる楽しい場面があったりで、私も本書を仕上げる過程で何度も動画を見直しましたが、まったく飽きることがありませんでした。
読者の皆さんも、「生きたドイツ語」の力を、楽しく向上させることができるようにと願っています。