現代イギリス演劇を代表する劇作家の一人、キャリル・チャーチルの演劇の多様な側面を提示し、彼女の作品世界が一貫した主題や態度を示し続けているとともに、豊かな多様性を持っている点を明らかにする。時系列に沿ってチャーチルの創作活動を追いながら、各章でその時期の代表作や特に注目に値する作品を考察し、劇作家としてのチャーチルの全体像を示す。
シリーズ〈英語〉文学の現在(いま)へ
第二次世界大戦前後から現代まで、激動の時代に翻弄される世界各地で〈英語〉という表現媒体を共有しつつ、なおそれを問い直してきた作家たちが、文学の「現在(いま)」をどのように切り開いてきたのか――「イギリス」や「英語圏」といった従来の領域的思考を超える〈英語〉文学をあらたに考えるためのシリーズです。
序章
第一章 ラジオ・ドラマと精神医学――『恋わずらい』と『シュレーバーの神経症』に見るセクシュアリティの問題
原点としての『蟻』
『恋わずらい』の権威的語りとセクシュアリティの多様性
『シュレーバーの神経症』に見る脱男性化の効用
第二章 支配と所有の問題と協同的な作業の発見――『革命時の病院』および『所有者たち』から『バッキンガムシャーに射す光』へ
チャーチルの驚異の年
『革命時の病院』に見る反精神医学の影響
『所有者たち』――〈所有〉の概念が生む競争と抑圧
ジョイント・ストックとの出会い
『バッキンガムシャーに射す光』――革命の背後で頓挫した革命の物語
第三章 『クラウド・ナイン』における性の政治学
性の政治学の芝居
『クラウド・ナイン』成立にあたってのワークショップの重要性
クロス・キャスティングの働き
アメリカ初演時になされた変更
近年の『クラウド・ナイン』批判
第四章 サッチャー時代と『トップ・ガールズ』
女性首相の誕生とチャーチルの危機感
サッチャーのマネタリズム政策
時空を超えた昇進祝賀パーティ
マーリーンとジョイスの対立
アンジーの恐怖は克服できるか
第五章 ルーマニア革命と『狂える森』
チャーチルの作風の変化
ルーマニア革命――運命の一九八九年一二月二一日
直線的な物語展開を拒む三部構成
歴史の終わりの後に?――吸血鬼と犬の寓話
第六章 『スクライカー』と『はるか遠く』に見るエコロジー表象の困難
多様化・先鋭化するチャーチルの政治性
ロマン派のエコロジーと自然なきエコロジー
スクライカーの二重性とエコクリティシズムの二重拘束
『はるか遠く』と「奇異なる他者」としてのエコロジー
第七章 ポストドラマティックな冒険――『ナンバー』以降のチャーチル
二一世紀のチャーチル
クローン羊ドリーと『ナンバー』
パレスチナ問題と『七人のユダヤ人の子供たち』
チャーチルのポストドラマティックな冒険
文献案内
キャリル・チャーチル作品一覧
引用文献一覧
索引
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