南アフリカ出身で二〇〇三年にノーベル文学賞を受賞した作家ジョン・マクスウェル・クッツェーに関して、小説だけでなく、評論も含めた全主要作品を原則として出版年順に解説、論評し、クッツェーの文学へと導く。すでにクッツェーの作品を知っている読者にさらに深く考えてもらうこともできる。作品論と合わせて伝記的情報も多く取り入れ、評伝として読むこともできる。
小説家だけではなく、研究者でもあるクッツェーの評論も丁寧に紹介している。著者とクッツェーとの交流も描かれ、クッツェーの人柄も垣間見れる。
巻末には、文献案内を掲載し、読書の幅をより広げられる。
シリーズ〈英語〉文学の現在(いま)へ
第二次世界大戦前後から現代まで、激動の時代に翻弄される世界各地で〈英語〉という表現媒体を共有しつつ、なおそれを問い直してきた作家たちが、文学の「現在(いま)」をどのように切り開いてきたのか――「イギリス」や「英語圏」といった従来の領域的思考を超える〈英語〉文学をあらたに考えるためのシリーズです。
序章
第一章 一九七〇年代から八〇年代へ――作家の誕生と飛躍
『ダスクランズ』Dusklands (1974)
『石の女』In the Heart of the Country (1977)
『夷狄を待ちながら』Waiting for the Barbarians (1980)
『マイケル・K』Life & Times of Michael K (1983)
『フォー』Foe (1986)
『南アフリカの白人文学』White Writing: On the Culture of Letters in South Africa (1988)
第二章 一九九〇年代の多彩な展開
『鉄の時代』Age of Iron (1990)
『振り返って考える――論文とインタヴュー』Doubling the Point: Essays and Interviews (1992)
『ペテルブルグの文豪』The Master of Petersburg (1994)
『検閲論』Giving Offense: Essays on Censorship (1996)
『少年時代』Boyhood: Scenes from Provincial Life (1997)――三人称と現在形について
第三章 大いなる転換期
『動物のいのち』The Lives of Animals (1999)
『恥辱』Disgrace (1999)
『見知らぬ岸辺』 Stranger Shores: Essays 1986-1999 (2001)
『青年時代』Youth (2002) ――遅れてきたモダニスト
『エリザベス・コステロ――八つのレッスン』 Elizabeth Costello: Eight Lessons (2003)
第四章 オーストラリアへの移住と模索
『遅い男』 Slow Man (2005)
『悪い年の日記』 Diary of a Bad Year (2007)
『内部の作動』 Inner Workings: Essays 2000-2005 (2007)
『サマータイム』 Summertime: Scenes from Provincial Life (2009)
『ヒア・アンド・ナウ』 Paul Auster & J.M.Coetzee, Here and Now: Letters 2008-2011 (2013)
『良い物語――真実、フィクション、心理療法をめぐる対話』Arabella Kurtz & J. M. Coetzee, The Good Story: Exchanges on Truth, Fiction and Psychotherapy (2015)
第五章 イエス三部作と近年の動向
『イエスの幼子時代』 The Childhood of Jesus (2013)
『イエスの学童時代』 The Schooldays of Jesus (2016)
『イエスの死』 The Death of Jesus (2019)
『晩年の評論』 Late Essays 2006-2017 (2017)
『モラルの話』 Moral Tales (原書未刊)
『ポーランド人』 The Pole (2023)
補論一 近代文学の終わりとJ・M・クッツェー
補論二 クッツェー文学における「私」の問題――デカルトの主題による変奏
文献リスト
文献案内
年譜
あとがき
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