20世紀後半のアメリカで多くの読者に愛され、日本でも翻訳が多く出版され読まれている作家のひとり、カート・ヴォネガット。
本書では、第2次世界大戦のドレスデン無差別爆撃を体験したヴォネガットのトラウマとの戦いの歴史をたどりながら、その作品を包括的に批評する。
長編を出版順に論じ、ヴォネガットのトラウマとの関わりかたの変化を、多くの先行研究をもとに紐解く。
巻末には、簡明な説明を付した、豊富な文献リストを掲載。装幀宗利淳一氏。
序
第1章 出発——『プレイヤー・ピアノ』と『タイタンの妖女』
ヴォネガットとSF
『プレイヤー・ピアノ』——「移行期」のディストピア小説
『タイタンの妖女』——SFエンターテインメント?
第2章 飛躍——『母なる夜』から『スローターハウス5』まで
トラウマに向かって
『母なる夜』——語り得ない罪、罪深い「ロマンス」
『猫のゆりかご』——彼はいかにしてボコノン教徒になったか
『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』——亀裂の入った風刺文学
『スローターハウス5』——「わたしはそこにいた」
第3章 迷走——『チャンピオンたちの朝食』から『ジェイルバード』まで
成功のあとで
『チャンピオンたちの朝食』——「切実」なメタフィクション
『スラップスティック』——薬漬けのユートピア
『ジェイルバード』——凡庸な社会主義シンパサイザーの肖像
第4章 成熟——『デッドアイ・ディック』から『青ひげ』まで
キャリアの総括
『デッドアイ・ディック』——傍観者の罪意識
『ガラパゴスの箱舟』——「人間」から遠く離れて
『青ひげ』——トラウマと芸術
第5章 終着——『ホーカス・ポーカス』と『タイムクエイク』
トラウマの先へ
『ホーカス・ポーカス』——ベトナム帰還兵の教え
『タイムクエイク』——作家人生の肯定
あとがき
年譜
キーワード集
文献リスト
索引
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