現代アメリカ小説を代表するコーマック・マッカーシー(Cormac McCarthy, 1933- )の小説11作(1作は実質的にはシナリオ)を論じ、「暴力」表象と「倫理」的洞察という、マッカーシー作品に特有の問題系を探究する。生死にまつわる圧倒的でカオス的な感覚に満ちたマッカーシー文学の本質を紐解く。映像化された作品についても言及している。
目次
序章コーマック・マッカーシーの人と作品
第1章『果樹園の守り手』——「保守」の倫理と市民的反抗の精神
「保守」と市民的反抗の精神
ニューディール・リベラルの暴力性と「保守」
レッドブランチ前史——アイルランド、ウィスキー暴動、北軍についた南部人
コンフォーミストからアンチノミアンへ
イニシエーションと「掟」の創造への意志
第2章『外なる闇』——南部ゴシックとグノーシス主義の世界像
南部ゴシックへの定位
「グロテスク」と/な「他者」
時空間の飛翔とグノーシス主義的「無知」
彷徨の果ての「悪」と「暴力」
グノーシス主義的心性とゴシック
第3章『チャイルド・オブ・ゴッド』——暴力と帰還する聖なるもの
暴力と聖なるもの
暴力の主体と共感のベクトル
否定される共同体の自由意志と聖化される暴力
涙と暴力の詩学
あなたによく似た神の子
第4章『サトゥリー』——自己探究と「父」なるものの影
ゴシック都市ノックスヴィルと死への妄執
告白としての小説と自己探究の方法としての堕落
「父」なるものとの和解なき離別と、逃れえないその影
第5章『ブラッド・メリディアン』——暴力表象と倫理の行方
小説と暴力表象
「成長」しない少年のウェスタン・ビルドゥングスロマン
砂漠、狼、戦争
暴力の弁証法と倫理の行方
ポスト・ヒューマンの倫理に向かって
第6章『すべての美しい馬』——冷戦カウボーイと「永遠へのノスタルジア」
冷戦カウボーイのイデオロギー
「テキサス」を去る
「永遠へのノスタルジア」と独我論的自己
裁かれる冷戦カウボーイ
砂漠へ
第7章『越境』——「剥き出しの生」と証人の責務
狼の舞と啓示体験
シートン的パラドクスと「狼」のロマンティシズム
自然の無関心と、狼(人間)=ホモ・サケルの身体
高慢の罪と証人の責務
永遠の証人と倫理の起源
第8章『平原の町』——夢のなかで他者への倫理的責任は始まる
同時代的文脈と『国境三部作』の起点
アメリカ的自己と他者としてのメキシコ
他者への倫理的責任と供犠の意味
夢のなかの責任と証言する者
第9章『血と暴力の国』——例外状態、戦争、宿命論と自由意志
「例外状態」としてのアメリカ
後景化される「戦争」
宿命論と自由意志のあいだ
第10章『ザ・ロード』——崇高の向こう側
終末論的世界の倫理
夢と記憶の危険
言葉とカニバリズム
崇高の向こう側
第11章『特急日没号――劇形式の小説』――“You See Everything in Black and White"
グローバル資本主義の精神とポストモダン文学の倫理
ポストモダン都市ニューヨーク
弁証法的関係の緊張と脱構築される主体
ポストモダンにおける倫理の主体・主体の倫理
あとがき
年譜
キーワード集
主要文献リスト
索引
著者略歴
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