三修社 SANSHUSHA

MENU

言語一覧

  • TOP
  • カズオ・イシグロ 記憶、孤独、そして「関係性」の方へ

カズオ・イシグロ 記憶、孤独、そして「関係性」の方へ

  • カズオ・イシグロ 記憶、孤独、そして「関係性」の方へ
  • 書籍版

カズオ・イシグロ 記憶、孤独、そして「関係性」の方へ

著者名
秦 邦生
判型
四六判/並製
ページ数
446ページ
ISBN
978-4-384-06042-3 C3098
初版年月日
2025/11/15
定価
3,960円 (本体 3,600円+税)
ジャンル
文芸 > 文学 / 専門書・研究書 > 文学 > 英語
シリーズ
〈英語〉文学の現在へ

ノーベル賞作家カズオ・イシグロの長篇小説を読み直す

ハリー・ランサムセンターのアーカイヴ資料や、インタヴューを詳細に検分し、さらにこれまでの研究成果を概観しながら、イシグロが作品に込めた時代意識とテーマをあきらかにする。イシグロの文学、死すべき運命を背負った人間への思いが緻密な模様として編み込まれたテクストの読解を試みる。


シリーズ〈英語〉文学の現在へ
第二次世界大戦前後から現代まで、激動の時代に翻弄される世界各地で〈英語〉という表現媒体を共有しつつ、なおそれを問い直してきた作家たちが、文学の「現在」をどのように切り開いてきたのか――「イギリス」や「英語圏」といった従来の領域的思考を超える〈英語〉文学をあらたに考えるためのシリーズです。

目次

序章 カズオ・イシグロを読むために
ハリネズミの寓話
カズオ・イシグロ小伝(小説家デビュー以前まで)
本書の構成といくつかのテーマ
批評史の概略
 
第一章 『遠い山なみの光』――「始まり」と悼みの光景
作家イシグロの出発点
『遠い山なみの光』あらすじ
「子供」から「母親」へ
日本の「再出発」とそのひずみ
「始まり」と「母性」のジレンマ
「子殺し」の反復と変奏
響き合う傷のかたち
「原爆」という主題
 
第二章 『浮世の画家』――「男らしさ」の美学とその蹉跌
職業作家への道
『浮世の画家』あらすじ
「メタファー」としての日本
「日本人」になること、ならないこと
「男らしさ」の美的教育
ほかの登場人物たちの声
「炎」と「はかなさ」の気配
歴史のアイロニー
 
第三章 『日の名残り』――小さき者たちの理想
「国際的作家」への大きな一歩
『日の名残り』あらすじ
サーヴァントとは誰か
イングリッシュネスとステレオタイプの再加工
「サーヴィス」の理想とその裏面
矮小なものの叙事詩
男性性と感情の否認
「わたしたちはみな執事だ」

第四章 『充たされざる者』――ありふれたトラウマの物語
「カオス」としての生
『充たされざる者』あらすじ
「夢」への転回と「小さな場所」
変わりゆく世界への意識
コスモポリタニズムとアウトサイダーの立場
有限な「家族の時間」
「パフォーマンス」の不安
「傷」と「慰め(コンソレーション)」

第五章 『わたしたちが孤児だったころ』――「気泡」の外部へ
「ノスタルジー」の善用
『わたしたちが孤児だったころ』あらすじ
「子供」の世界と「大人」の世界
探偵小説との戯れ
コスモポリタン都市の理想と現実
イギリス、日本、中国
孤児たちと女性たち
「愛」の問題

第六章 『わたしを離さないで』――「羨む者たち」の共同体
「オモチャの戸棚」
『わたしを離さないで』あらすじ
原爆からクローンへ
福祉国家の夢とその残滓
なんのためのアート?
隠された「嫉妬」、演じられた「羨望」
「愛」の凡庸さ
「有限な生」に向き合う

第七章 『忘れられた巨人』――晩年のスタイル
十年ぶりの長篇
『忘れられた巨人』あらすじ
歴史の「空白期間」
忘却の霧の向こう側
埋められた者たちの痕跡
断片をつなぎ合わせる
「関係性」への転回
死にゆく者たちの孤独

第八章 『クララとお日さま』――フィクションと「赦す」こと
ノーベル賞受賞と両親の死
『クララとお日さま』あらすじ
絵本からの出発
ポストヒューマン・ケアの問題
「愛」と不平等
成長の時間性
「赦し」をめぐって
ポスト・トゥルース時代のフィクション

引用文献一覧
カズオ・イシグロ 文献案内
あとがき
索引

読者レビュー

  • amazonamazon
  • 7net7net
  • booklogbooklog

著者紹介

秦  邦生(シン クニオ)
東京大学准教授。専攻は英文学。編著に『ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』を読む』(小川公代との共編、水声社、2025年)、『ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読む』(水声社、2021年)、『イギリス文学と映画』(松本朗、岩田美喜、木下誠との共編、三修社、2019年)、翻訳書にレイモンド・ウィリアムズ『オーウェル』(月曜社、2022年)、レベッカ・ウォルコウィッツ『生まれつき翻訳』(佐藤元状、吉田恭子、田尻芳樹との共訳、松籟社、2021年)、フレドリック・ジェイムソン『未来の考古学』(河野真太郎、大貫隆史との共訳、作品社、2011-12年)など。