三修社 SANSHUSHA

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シリーズ刊行開始 アメリカ文学との邂逅

更新日:2019.06.28

 二〇世紀後半のアメリカで、カート・ヴォネガットほど愛された作家もいなかっただろう。対抗馬となり得る

としたらJ・D・サリンジャーくらいだが――と書いてすぐに気づかされるのは、この二人がほとんど完全に同

時代人だという事実である(ヴォネガットは一九二二年生まれ、サリンジャーは一九一九年生まれ)。実際、ど

ちらも第二次世界大戦に出征しているし、最初の長編小説を出した時期もほぼ同じなのだ(『プレイヤー・ピア

ノ』は一九五二年、『ライ麦畑でつかまえて』は一九五一年)。

(中略)

 愛されることへの不安は、愛されないことへの不安でもある。だからときに人は愛されないことを自ら選択す

るかのように振る舞ってしまうのだし、「著者公認」の伝記作家チャールズ・J・シールズが提示するヴォネガ

ット像も、愛されることを強く求めながらも愛情関係をうまく維持できない人間といったように見える。もち

ろん、こうした「愛」をめぐる不安自体はありふれたものであるわけだが、それがヴォネガットの場合において

興味深いのは、一つには彼が最後まで読者(からの愛)に背を向けなかったからであり、そしてもう一つにはそ

うした「不安」そのものに、特異な戦争体験――ドレスデン無差別爆撃の生存者としての――が深く影響してい

るように思えるためである。 (『カート・ヴォネガット トラウマの詩学』序章より抜粋)

20世紀を代表するアメリカ文学を作家ごとに論じる新シリーズが始まりました。第1弾はカート・ヴォネガット。



『カート・ヴォネガット トラウマの詩学』 諏訪部浩一 著

20世紀後半のアメリカで多くの読者に愛され、日本でも翻訳が多く出版され読まれている作家のひとり、カート・ヴォネガット。

本書では、第2次世界大戦のドレスデン無差別爆撃を体験したヴォネガットのトラウマとの戦いの歴史をたどりながら、その作品を包括的に批評します。

長編を出版順に論じ、ヴォネガットのトラウマとの関わりかたの変化を、多くの先行研究をもとに紐解きます。

巻末には、豊富な文献リストを簡明な説明を付して掲載。



2019年7月9日配本


『トマス・ピンチョン  帝国、戦争、システム、そして選びに与れぬ者の生』 永野良博 著



『チャールズ・ブコウスキー  スタイルとしての無防備』 坂根隆広 著


シリーズ装幀 宗利淳一


シリーズ監修者紹介

諏訪部 浩一(スワベ コウイチ)
1970年生まれ。上智大学卒業。東京大学大学院修士課程、ニューヨーク州立大学バッファロー校大学院博士課程修了(Ph.D.)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部准教授。
著書に『A Faulkner Bibliography』(2004年、Center Working Papers)、『ウィリアム・フォークナーの詩学―一九三〇-一九三六』(2008年、松柏社、アメリカ学会清水博賞受賞)、『「マルタの鷹」講義』(2012年、研究社、日本推理作家協会賞受賞)、『ノワール文学講義』(2014年、研究社)、『アメリカ小説をさがして』(2017年、松柏社)、編著書に『アメリカ文学入門』(2013年、三修社)、訳書にウィリアム・フォークナー『八月の光』(2016年、岩波文庫)など。



以下続刊も第一線のアメリカ文学研究者による、作品を中心に据えながら作家のキャリア全体を捉えた評論が続きます。どうぞご期待ください!



2020年 春より順次刊行予定

『コーマック・マッカーシー』 山口和彦

『ティム・オブライエン』 渡邉真理子

『ポール・オースター』 下條恵子

『アーシュラ・K・ルグィン』 佐々木真理

『ジェイムズ・ボールドウィン』 辻 秀雄


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『アメリカ文学入門』 

植民地時代からポスト冷戦期まで、100人の作家を通してアメリカ文学を網羅的に紹介。

「アメリカ文学、何から読めばいいかわからない」人にむけたガイドブック。

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